柘(つげ)は目が細かくぎっしりと詰まっています。
よって木材の中でも硬く、加工もしやすいことから印鑑の材料としてはもちろんのこと、櫛や民芸品の材料にも使われる万能素材です。
特に柘の中でも鹿児島・御蔵島産の柘を本柘(ほんつげ)と呼び、柘の中でも最高級印材として親しまれています。
木材は印鑑以外でも私たちの生活の中でありとあらゆる場所で使用され、供給が需要に追い付かないのが現状です。
この国産の柘は大きく成長するまで待ちきれず、早い段階で切り出されてしまいわずか6センチしかない印材の中でも不自然な年輪のあとが残ってしまうようになってきました。
もうここ10年くらい前から本柘印材としての品質は確実に落ちてきています。
そこで今はタイなど東南アジア原産のシャム柘とかアカネと呼ばれる木材を使わざるを得ないという事態になっています。
多くのはんこ屋で「鹿児島産の本柘を使用しています」と声高らかに宣伝していますが業界人の私は???って思ってます。
食品もあちこちで魚沼産コシヒカリとうたったり伯方の塩とか言ってますがそんなに取れるわけがないはずなんですが・・・(笑)。
まあ、こんなことでボヤいていても進歩はありません。
前向きに進んでいきましょう。
では柘印材の長所・短所を見てみましょう。
象牙を筆頭とする動物性の印材より価格が安く予算がないという方には大きな味方になってくれます。
なんと言っても植物の持つぬくもり・温かな感触は最高です。金属の印材としてチタンがありますが、チタンにはぬくもりを感じることはありません。
ただひたすら力強さを感じるだけです。
柘印材は長所よりこの短所が問題なんですよ。
「強度・耐久性が弱い」という致命的な欠点があります。
使っていくうちに朱肉の油分が印面に浸み込んでだんだんともろくなり、やがて欠けてしまうという現象がどうしても起きやすいのが最大の欠点です。
木材を水につけておけばやがては腐ってボロボロになるという場面を想像していただければ理解しやすいと思います。
お店に「印鑑が欠けちゃった。直りますか?」と駆け込んでくるお客さん、とても多いです。
この時の印材を見るとほとんどが柘かラクト。
動物由来の印鑑(象牙・水牛類)を持ってこられる方は少数です。
大事な用途として作る実印や銀行印は予算が許す限り水牛等の丈夫な素材で作成されることをお勧めします。