実印や銀行印など印鑑の側面にはちょうど人差し指が当たる部分に切り込みがあります。
そのため印面の上下が判断でき、とても便利になっています。
これは「あたり」とか「さぐり」と呼ばれています。
この「あたり」があることで少々暗いところでも印面の上下がわかり、書類に正しい向きで捺印できます。
また急いでいるときにもいちいち確認する時間が省けて効率的です。
しかし・・・、
「せっかく高額のお金をかけて作成した実印や銀行印には「あたり」がついていない!どういうことだ!」
と感じたことはないでしょうか。
これには理由があるのです。
実印など印鑑はご本人に代わってその人の権利を主張したり守るという大きな役割があります。
すなわちもう一人の自分なのです。
印鑑の側面に切り込みを入れて「あたり」をつけることはその大切な自分の体を削る・傷つけると考えられています。
したがって高価な印鑑には「あたり」が付いていないのです。
当店でも税込100円の既製認印を販売していますがこれには「あたり」がついています。
俗にいう三文判(さんもんばん)とよばれているものです。
「三文判でもなんでもいいからここにハンコを押して」
というときにあまりしっかりと内容の吟味もしないで気軽に押しちゃうから三文の価値しかないということから付いた名前です。
二束三文(にそくさんもん)という言葉がありますがこれも同じですね。
江戸初期の「金剛草履(こんごうぞうり)」の値段が、二束(ふたたば)、すなわち二足で三文の値段で売られていたことに由来しています。
印相体などちょっとなにが書いてあるのかわかりにくい書体でどうしても目印をつけたいのであれば
印鑑の側面を削ったりしないでシールを貼る程度にしておいたらいかがでしょうか。
自分の身体に救急絆創膏やピップエレキバンを貼っている感覚で(笑)
そして「あたり」が付いていないもう一つの大きな理由として
実印の押印を必要とするような大切な書類を前にして、
印面の上下を確認する時間のあいだに
「この書類に押印して本当にいいのだろうか?」
と再度確認する時間を取るといった意味合いもあるようです。